外壁の美しさを決定するサイディングには、実に様々な種類と特徴があります。窯業系から木質系まで、この記事では4種類のサイディングボードのそれぞれのメリット・デメリットについて詳しく解説します。サイディング選びに役立つ情報をお届けしますので、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
4種類の外壁材
外壁材の種類は大きく分けて以下の4つに分類されます。
- 窯業系サイディング
- 金属系サイディング
- 樹脂系サイディング
- 木材系サイディング
ここでは4つの外壁材についてメリット、デメリットを詳しく解説します。
窯業系サイディングとは
窯業系サイディングはサイディングの一種であり、工場でセメント質や繊維質などの原料を板状に形成して作られます。窯業系サイディングは近年の住宅で広く採用されており、70〜80%のシェアを占めるほど人気があります。
窯業系サイディングのメリット
デザインとカラーがとても豊富
窯業系サイディングは木目調、レンガ調、タイル調、石積み調など多彩なデザインを取り揃えています。これにより外観の個性やイメージを自由に演出することができます。さらに、本物の素材に近い仕上がりを実現できるため、高級感や質感も兼ね備えています。
初期費用が安い
他の外壁材に比べて初期費用が抑えられます。1平方メートルあたりの価格は約3,000円から7,000円程度となっており、金属系やタイルなど他の材料と比較して最も経済的です。この特徴は、住宅建設やリフォームの際に重要な要素となるでしょう。
施工期間が短い
窯業系サイディングは工場で生産された板状の材料を使用するため、施工期間を短縮することができます。つまり従来のモルタルや塗り壁と比較して、施工工程がスムーズに進みます。これにより、工事期間中の騒音や周囲への影響を最小限に抑えられます。
職人の腕による差が出にくい
窯業系サイディングは工場で大量生産されるため、品質にムラが生じにくいのが特徴です。施工の際には技術力や腕前が求められますが、他の外壁材と比較して職人の技量による差が少ないと言えます。ただし、悪質な業者による施工の可能性も考慮に入れておく必要があります。
耐火性が高い
窯業系サイディングは、不燃材料や準不燃材料として認められており、耐火性が非常に高いというメリットもあります。火災などの災害時に建物の耐火性能が重要視される現代では、耐火性が高い外壁材として選択されることが多々あります。45分から60分程度の耐火性を持ち、被害を最小限に抑える役割を果たします。
窯業系サイディングのデメリット
メンテナンス頻度が多くなる
窯業系サイディングは定期的なメンテナンスが必要です。塗料の劣化やサイディングボードのひび割れ、反りなどが問題となり放置すると雨漏りやさらなる劣化の原因となります。再塗装や部分修理が必要とされ、10年に1度の再塗装と5〜7年に一度の部分修理が推奨されています。
熱がこもりやすい
窯業系サイディングは熱を吸収しやすいという性質があります。夏季には室内の温度上昇を招きやすく、エアコンなどの使用頻度が増える可能性があります。遮熱塗料の利用や断熱材の組み合わせなど、熱のこもりを軽減する工夫が必要です。
素材自体に防水性能がないため塗装が欠かせない
セメントを主原料とする窯業系サイディングは、素材自体に防水性が低いという特性があります。そのため、防水性を確保するために塗装が必要です。しかし塗料も時間とともに劣化してしまうため、定期的なメンテナンスが欠かせません。
近くで見ると本物のタイルなどにはやや見劣りする
豊富なデザインとカラーバリエーションを持つ窯業系サイディングですが、本物のタイルや木材の質感に比べると、近くで見ると見劣りすることがあります。特に高級感や独自性を求める場合には、本物の素材を使用した外壁材を選択する方が好まれることもあります。
金属系サイディングとは
金属サイディングは、模様が施された金属板と断熱性能を持つ裏打材で構成される外壁材のことを指します。工場の一貫した製造ラインで生産されるため品質が均一で安定しており、塗装仕上げも不要です。
金属系サイディングのメリット
仕上がりが安定している
金属サイディングは工場で一貫して製造されるため品質が安定しており、仕上がりが均一です。これにより現場での施工品質にばらつきが少なく、美しい仕上がりが保証されます。
塗装仕上げが不要
金属サイディングは製造時に塗装が施されているため、追加の塗装作業が不要です。これによって塗装の手間やコストが削減され、長期にわたって美しい外観を維持することができます。
軽量で断熱性に優れる
金属サイディングは非常に軽量であり、断熱効果のある裏打材が組み合わされているため、断熱性能にも優れています。この特徴により外気温の影響を受けにくく、冬は暖かく夏は涼しい住環境を提供します。また軽量であるため施工が容易であり、建物の構造に負担をかけません。
省エネ効果
高い断熱性により冷暖房効率が向上し、省エネ効果が期待できます。これにより、エネルギー消費を抑え環境に優しい住まいを実現できます。
ひび割れ・凍害の心配がない
金属サイディングは他の外壁材でよく見られるひび割れや凍害の心配がありません。金属は耐久性が高く、寒冷地でも安心して使用することができます。
工期が短い
工場で生産されたパネルを現場で取り付けるだけで済むため、施工が迅速に行えます。これにより工期が大幅に短縮され、工事中の不便さを最小限に抑えることができます。
金属系サイディングのデメリット
錆びやすい
金属製の外壁材のため、雨水や湿気にさらされると錆びやすくなります。錆びが発生すると見た目が悪くなるだけでなく素材自体の劣化を招くため、定期的な塗装メンテナンスが必要です。特に海沿いなど、塩害のリスクがある地域では注意が必要です。
傷がつきやすい
金属系サイディングは硬い物に接触すると傷がつきやすい特徴があります。傷がつくと錆びの原因となり、外壁の劣化が進む恐れがあります。外壁周辺に物を置かないようにし、何かが倒れて外壁にぶつからないように注意する必要があります。
デザインが限られている
金属系サイディングは、他の外壁材に比べてデザインのバリエーションが少ない傾向があります。モダンでシンプルなデザインには向いていますが、独特な外観を求める方には選択肢が限られます。個性を重視した外観を希望する場合は、他の外壁材を検討するのが良いでしょう。
樹脂系サイディングとは
北米の住宅で広く採用されている樹脂系サイディングですが、日本ではまだ少数派の外壁材です。しかし寒冷地である北海道や東北などでは、重ね張りや張り替えの際に選ばれることもあります。
樹脂系サイディングのメリット
樹脂系サイディングのメリットは以下のとおりです。
耐久性が抜群
樹脂系サイディングは、他のサイディング材と比べて耐久性が非常に高いです。通常、窯業系サイディングは7〜10年、金属系サイディングは10〜15年程度でメンテナンスが必要ですが、樹脂系サイディングは20〜30年と言われています。表面の塗料が劣化することで色褪せが生じる一般的なサイディングとは異なり、樹脂系サイディングは素材自体に色素が含まれているため色褪せがほとんどなく、再塗装がほとんど不要です。また、サイディング同士のつなぎ目部分のシーリング補強工事も、樹脂系サイディングでは5〜10年ごとに必要ないものもあります。
凍害と塩害に強い
樹脂系サイディングは北欧などで多く使用されるほど凍害に強いです。撥水性が高く水をほとんど吸収しないため、凍結によるひび割れのリスクが低いです。また、塩分を含んだ雨による錆びも少ないため、海浜地域でも安心して使用できます。
非常に軽量
樹脂系サイディングは主成分にプラスチック系の材料を使用しているため、非常に軽量です。窯業系サイディングの10分の1程度の重さであり、建物への負担が少なく、地震などの際の揺れも軽減できます。
樹脂系サイディングのデメリット
樹脂系サイディングのデメリットは以下のとおりです
色やデザインの選択肢が少ない
樹脂系サイディングは他のサイディングに比べて色やデザインのバリエーションが少ないと言われています。ナチュラルな木目を再現したものもありますが、全体的な選択肢は限られています。
防火性能に不安がある
樹脂系サイディングの素材である塩化ビニルは燃えにくい特性を持ち、直接火に接していなければ自然に消火する性質があります。多くの製品は防火構造認定を取得していますが、準防火地域などで使用する場合は、外壁構造が政令で定める防火基準を満たす必要があります。防火性能に不安がある場合は、実績のある施工業者に確認することをお勧めします。
台風など強風の影響を受けやすい
樹脂系サイディングの軽量性から強風で剥がれるのではないかという不安があるかもしれません。しかし、風対策用に特殊な形状に加工された製品もあり、専用のウィンドロックで下地材にしっかり固定する工法も存在します。業者によってはこの施工方法を採用しているところもありますので、強風対策が心配な方は事前に確認しておくと良いでしょう。
木材系サイディングとは
木材を使った薄い板状の外壁材である木質系サイディングは、無垢な板材の表面を加工して耐火性を高めた素材です。木材をそのまま外壁材として使用すると、燃えやすさや雨風による劣化、害虫被害といった問題が発生しやすいですが、加工することでこれらの問題を克服し、機能性を向上させたのが木質系サイディングです。
木材系サイディングのメリット
木質系サイディングのメリットは以下のとおりです。
断熱性が高い
天然木を素材とする木質系サイディングは、熱を吸収しにくく、断熱性に優れています。金属系サイディングでは熱がこもりやすく、夏場は室内が暑くなりがちですが、木質系サイディングなら外壁の熱が直接家の中に伝わるのを防ぎ、真夏でも快適な住環境を保つことができます。
温かみのあるデザイン性
木質系サイディングは、天然木材を使用しているため、ナチュラルで高級感のある質感を持っています。金属系や窯業系サイディングで木目調に仕上げることも可能ですが、人工的な質感は避けられません。木質系サイディングならではの自然な風合いと、カラーリングによって多様な仕上がりが楽しめる点が魅力です。
経年による味わい深さ
木質系サイディングの最大の魅力は、木材特有の風合いです。ナチュラルで繊細な質感は他の素材では再現が難しく、経年による変化も楽しめます。時間が経つほどに色合いや質感が変わり、独自の味わいが深まります。この経年変化を楽しみながら、愛着が増していくというオーナーさんも多いでしょう。
木材系サイディングのデメリット
木質系サイディングのデメリットは以下のとおりです。
使用が難しい地域がある
木質系サイディングを使用する際、地域によっては制限があります。特に《準防火地域》や《法22条区域》と呼ばれる地域では、火災予防のために建築資材に関する制限や指定があります。木材は燃えやすいため、これらの地域では燃えにくい素材が推奨され、使用可能な資材が限られています。
メンテナンス頻度が高い
木材は自然素材であるため他の外壁材と比べると雨やカビによる劣化が早く、定期的なメンテナンスが必要です。5年から10年に一度の頻度でメンテナンスを行うことが推奨されます。メンテナンスを怠ると腐食の原因になるため、注意が必要です。しかし、適切なメンテナンスを行うことで、木材の外壁は長持ちし、愛着も湧いてきます。昔の蔵や古民家が今でも健在であることからも、木材の丈夫さと自然の恩恵を感じることができます。
価格が高い
木質系サイディングは天然素材であるため、他の外壁サイディング材に比べて高価な傾向があります。木の種類によっても価格は異なりますが、一般的なサイディング材の約2倍程度の工事費用がかかることが多いです。それでも木質系サイディングが人気なのは、優れたデザイン性が一因です。おしゃれな雰囲気や温かみを求める方には、木質系サイディングが支持されています。
まとめ
本記事では
- 4種類のサイディングボードの紹介
- 窯業系サイディングとは
- 金属系サイディングとは
- 樹脂系サイディングとは
- 木材系サイディングとは
について解説しました。それぞれの外壁材には独自のメリットとデメリットがあり、選択に際してはそれらを十分に理解することが重要です。この記事を参考に、自分のニーズに合った最適な外壁材を選んでみてはいかがでしょうか。